【要約】「老い」から学ぶ、老いるとどうなるのか、老いと向き合う方法【シモーヌ・ド・ボーヴォワール】

今回はフランスを代表する作家で哲学者である

が1970年62歳の時に書いた

名著「老い」を解説していきます

 

この本は一言で言うと

老いるとどうなるのかを教えてくれる本です。

 

私たちは老いていくということをどこか他人ごとで

遠いものだと思って目を背けて生きています。

 

ですが間違いなく言えることは、

いつの間にか気づかないうちに人は、

老人の一人に確実になっているということです。

 

本書には、

「老いは不意打ちである」

と書かれています。

いきなり他人から電車で席を譲られたり、

子供からおじさんと声をかけられたり

鏡にうつる自分を見て

「めっちゃおじさんじゃん!」

となる日が来るということです。

 

本書は、

当時のたくさんの資料を元に老人を分析しています。

 

今回の記事を読めば、

老いるとどうなるのかを知ることができるようになるでしょう。

 

老いの苦悩は四種類ある

老いの苦悩には

「生理的」「文化的」「社会的」心理的

の四種類あります。

 

生理的とは、

シンプルに体の衰えのことです。

例えば、

目や耳に歯が悪くなったり、白髪、薄毛、

認知力の低下などです。

 

社会的とは、

認知力や体力の低下によって仕事のパフォーマンスが下がり

定年退職や仕事を失うことです。

 

文化的とは

家族の中でおじいちゃんおばあちゃんと立ち位置になって

それらしく振舞わなければならなくなることです。

 

心理的とは、

心と身体のギャップのことです。

年齢が70歳だったとしても

心の中が20歳30歳で止まっていたりすると

「なんでこんなこともできないんだ、自分は」

という苦しみが生まれます。

 

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老人は自分を責めやすくなる

 

老人になるとトイレや仕事、運動など

昨日できていたことが今日できなくなり

今日できたことが明日できなくなります。

 

著者は、老人になることについてこう言っています。

「加齢という現象は、

 すべての人が中途障害者になることである。」

中途障害者とは、はじめから障害者だった訳ではなく

健康だったのに人生の途中で病気、事故などで

障害を負った人のことを言います。

 

高齢者は若くて健康で何でもできていた頃の

元気な自分の記憶があるからこそ

今の自分との大きなギャップに苦しみ

「不甲斐ない」「情けない」という感じで

自分を責めてしまいやすくなります。

 

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老人になると仕事のパフォーマンスが下がり成果が出せなくなる

 

老いていけば、認知力や体力が下がっていき

だんだんと仕事がうまくできなくなっていきます。

すると、

会社の中でだんだんと邪魔な存在になってしまい

最終的には、

定年退職という名目で職場を去ってもらうことになります。

 

著者は、

スポーツ選手や歌手、芸人、数学者、科学者、作家

楽家、画家、政治家に至るまであらゆる職業と成果について調べ

その結果、ほぼ全ての仕事で50歳、60歳を迎えると

パフォーマンスの低下が見られることを発見しました。

 

著者はこう言っています

「この社会は、老人たちがまだ頭脳が明晰で

 体が健康である限りは彼らを尊敬するが、

 老いぼれて耄碌すると厄介払いする。」

 

たとえ若いときに天才的な能力を持っていたとしても

衰えていくのです。

 

ですが、

画家と音楽家は例外

老人でも素晴らしい成果を出せる仕事だと言っています。

これらの仕事は技術の習得に時間がかかるからです。

 

実際にピカソ葛飾北斎、バッハなどは、

晩年の作品が高く評価されています。

 

本書には、「ジャンルを替えると良い」

と書かれています。

作家なら50歳からか対象やカテゴリーを変えたり、

会社員ならサラリーマンからブロガーに変える

といったイメージです。

 

同じ仕事をしていると

以前できたことができなくなる苦しみを味わうことになります。

仕事やジャンルを変えて

また初心者として一から何かを始める方が

新鮮で若々しくいられるのです。

 

ジャンルを変えるのは、

年を取ってから始めるのは気力と体力が要ります

ですので、

できるだけ早いうちから老後に何をするのかを

決めておくのがいいでしょう。

 

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老人は職場にも家の中にも居場所がない

 

この本が書かれた当時

高齢者の世話は基本的には家族の義務でした。

老後の世話は必ずしも歓迎されるわけではありません。

 

そのため著者はこう言っています。

「父親あるいは母親が子どもたちの家庭に住むと

 冷遇されるかなおざりにされる恐れがある。

 いずれにしても彼らは従属状態に苦しむ。

 彼らは自分が家族の他の者たちから搾取されているか

 あるいはいじめられていると感じる。」

 

夫婦で二人が一緒に暮らすとしても

実際に2020年に熟年離婚の割合が最大になっていることから、

夫が定年退職してずっと家に入り浸るようになってから

妻がイライラして離婚するケースなどがあります。

 

一番きついのは老人の一人暮らしです。

不健康と貧乏と孤独という悪循環に陥ります。

 

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老人の問題のある行動は自分たちが抑圧されていることへの抗議

 

老人は体が不自由になり社会からお荷物のような扱いを受けて

家にいても孤独で居心地が悪く

今までできたことができないという苦悩を抱えています。

 

そんな老人が問題行動、いわゆる老害になってしまうのは、

自分たちが抑圧されていることへの抗議なのです。

 

誰も自分の話を聞いてくれないし

一人の人間として大事に扱われないことに

むしゃくしゃしてしまうのです。

 

迷惑行為の裏には、

家族や社会の高齢者への不遇な扱いがあるということです。

 

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老いは個人ではなく社会全体が引き受けるべき課題

 

肉体的な老化だけでなく、家族や社会から居場所がなくなったり

お金が無くて貧困に苦しんだりする高齢者に対して

「自分で何とかしろ」

と言うのは無理があります。

 

ですので、高齢者が生きやすいように

社会全体が手を差し伸べたほうがいいのです。

 

例えば、

定年後も高齢者が働けるような場所をもっと用意したり、

定年後に体調を崩した後に介護やお金に困らないように

年金や介護保険を充実させたり、

高齢者の人たちに優しく敬意を持つこと などです。

 

著者は

「厄介者になった高齢者をどう扱うかで

 その社会の質が図られる。」

と言っています。

 

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老いた自分を受け入れることが大事

 

老人をどう扱うのかは個人ではなく社会全体の問題だ。

と言いましたが、老人自身がやるべきこともあります。

 

それは、

 

それは老いた自分を受け入れること

 

です。

 

いつまでも自分が老いたことを受け入れられずに

「なんでこんなこともできないんだ。」とか

「オムツを吐くくらいなら死んだほうがましだ。」

と愚痴を言っているとより辛くなっていきます。

 

ですので、

どこかで正面から老いを受け入れることが大事になります。

 

老いることは、天気や他人と同じように

自分ではどうしようもできないことです。

年々できていたことができなくなってことに対して

「だからどうした」

という態度で老いを受け入れることがとても大事なのです。

 

ちなみに女性の場合は、老いを受け入れると

女らしさから脱却して

より自由に振る舞えることが分かっています。

 

 

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